「なぜ、これができていないのか」「じゃあ、どうするんだ」。会議で上司から出てくるのは、この繰り返しでした。答えると「それは言い訳だ」と返され、最後は「気持ちが足りないからだ」で終わります。
私はニッチな業界で法人営業をしていて、課長まで務めました。トラブルが起きると上の人はいなくなり、責任は下に押し付けられる。そんな職場で頑張り続けた末に燃え尽きて、転職しました。
この記事では、責任を取らない上司がなぜダメ出しばかりするのかを、悪口ではなく仕組みとして説明します。そのうえで、まともな人から辞めていく職場の特徴と、そこから離れるという選択についてまとめます。
責任を取らない上司の特徴
私のいた会社の上司や上の人たちには、共通する型がありました。特定の誰かを責めたいのではありません。こういう上司のいる職場は珍しくない、という意味で並べます。
ダメ出しばかりで、答えは出さない
いちばんよく覚えているのは、ひたすら「できていない点」を指摘し続ける姿です。「あれができていない」「これができていない」「じゃあ、どうするんだ」「なぜなんだ」。
でも、できていないことは、上司でなくても誰にでも分かります。いちばん分かっているのは本人で、あえて言う必要もないはずです。
トラブルになると、いなくなる
トラブルが起きると、上の人たちは姿を消しました。自分では動かずに外野からヤジを飛ばし、うまくいかなければ全部、自分以外のせいにします。
責任逃れが当たり前で、責任はいつも下に押し付けられていました。
仕事は丸投げで、権限は渡さない
課長といっても、私に任されていたのは面倒なことばかりでした。採用面接は担当していましたが、採るかどうかは、上司が履歴書などを見て決めていました。部下の評価や勤務表を作る権限もありませんでした。
手間も、下に回ってきます。会議に出られなくなったら、出られない人が全員の予定を聞いて、日程を調整し直す決まりでした。家族を病院に連れて行くような、自分ではどうにもできない事情でも同じです。
部下のミスはかばわず、手柄は自分のものにする
部下がミスをしても、上司はかばってくれませんでした。その一方で、私が作った Excel のマクロを、上司が断りなく、自分が作ったかのように扱っていたこともあります。
失敗は下に、手柄は上に。これでは、部下が頑張る理由がなくなっていきます。
なぜダメ出しばかりになるのか
会議で出てくるのは、「なぜできていないのか」「どうしたらできるのか」の繰り返しでした。出てきた答えには「それは言い訳だ」と返し、「最後は気持ちが足りないからだ」という単純な結論に飛びつきます。
これは、問題を解こうとしている会話ではありません。問題を解く力がないので、原因を本人のやる気や気持ちに求めるしかない。そういう発想が固まってしまっているのだと、私は思います。
「気持ちが足りない」は、上司が何も決めずに済む結論
本当の原因を探して手を打つには、仕事のやり方や人の配置を変えたり、お金をかけたりする判断が要ります。判断をすれば、その結果の責任は上司が負うことになります。
「気持ちが足りない」で終われば、上司は何も決めず、お金もかけず、責任も負わずに済みます。ダメ出しばかりになるのは、それが上司にとっていちばん楽な結論だからなのかもしれません。
問い詰めることが、マネジメントに見えてしまう
「どうするんだ」「アイデアを出せ」と問い詰める姿は、一見すると、部下を引っ張るマネジメントのように見えます。でも私のいた会社では、自分では答えを出せないことを隠すやり方になっていました。
会議で上司から出るのは、「ほかにどうしたらいいか、アイデアを出せ」という話ばかりでした。本気で提案しても「じゃあ、自分でやれ」で終わり、手伝いも助言もありません。お金がかかる案なら「やるな」です。
提案した人が、その実行を一人で背負わされる。それが分かっているので、みんな当たり障りのない提案でやり過ごしていました。
ダメ出しは、上から降りてくる
振り返ると、ダメ出しばかりなのは、直属の上司だけではありませんでした。社長の口から出るのも、「もっとやれ」「なんで間違えるんだ」「ほかにアイデアはないのか」ばかりでした。
そして、口うるさい人ほど、なぜか評価されて人の上に立てる。そんな風潮のある会社でした。評価する側が同じやり方をしているので、ダメ出しが上から下へ受け継がれていたのだと思います。
部下のミスは、上司の責任でもある
仕事を割り振り、進め方や確かめ方を決めるのは上司です。だから私は、部下のミスは、上司の責任でもあると考えています。
上司がかばうのは、ミスをなかったことにするためではありません。外に対しては上司が受け止め、中では同じミスが起きない仕組みを考える。そうしてもらえれば、部下は安心して仕事に向き合えます。
かばってもらえないと分かれば、部下は自分から動かなくなります。私のいた職場でも、部下はだんだん適当になり、そのしわ寄せは頑張る人に集まっていきました。
真面目な人ほど損をする仕組み
原因を見つけて、対策を考えられる人。そういう人ほど、何もできない上司に、使われるだけ使われます。仕事をこなすほど次の仕事が回ってきて、頑張らない人の分まで背負うことになります。
私もそうでした。経理担当の事務員さんが突然、会社に来られなくなったとき、「自分ならできる」と経理の仕事まで引き受けました。自分がやれば周りも上司も変わってくれると信じていましたが、何も変わらず、私が疲れ果てただけでした。
ダメな上司ほど、部下に「なんとかしてほしい」と期待します。真面目な人がその期待に応えるほど、上司は部下の頑張りに寄りかかる形になります。この矛盾は、やりがい搾取の入口は、月3万円の昇給だったに詳しく書きました。
まともな人が辞めていく職場の特徴
口うるさい人が評価される職場では、原因を考えられる人ほど、最後は辞めていきます。残るのは、言いなりになる人か、上司に好かれるように振る舞い、同じように「できていない点」を指摘するだけの人です。
優秀な人から抜けていく「死海効果」
優秀な人から辞めていき、そうでない人が残る。この現象は「死海効果」と呼ばれます。アメリカのソフトウェア技術者、ブルース・F・ウェブスターが、2008年に自分のサイトで名付けた言葉です。
死海には水が流れ込みますが、出ていくのは蒸発する水だけで、塩が残ります。同じように、力のある人ほど職場の理不尽に我慢せず、ほかに移れる先もあるので、先に「蒸発」していきます。残った職場は、ますます人を引きつけられなくなる、という例えです。
出典: The Wetware Crisis: the Dead Sea effect(Bruce F. Webster、2008年)
もとは IT 部門について書かれたものですが、私のいた職場にも、そのまま当てはまりました。
原因をつくった上司が、退職の理由を聞く
ある頑張り屋の事務員さんが、退職を申し出たときのことです。辞める本当の理由は、上司の無茶ぶりや、あいまいで責任を押し付けるような態度でした。それなのに、退職の理由を聞く面談をしたのは、その上司本人でした。
本人は「ほかにやりたいことができた」といった当たり障りのない理由で、その場をやり過ごしました。上司は、それをそのまま上に報告しただけです。
本当の理由は上に届かず、何も変わらないまま、人だけが辞めていきました。辞めた人の仕事は、残った人に押し付けられます。こうして、頑張る人ほど負担が増える悪循環が続きました。
その後、人がいなくなって売上も落ちたと、風の噂で聞きました。
あなたの職場は当てはまる?
当てはまるものに、印を付けてみてください。
- 会議では「なぜできていないのか」が繰り返され、最後は「気持ちが足りない」で終わる
- 提案すると「じゃあ、自分でやれ」と言われ、手伝いも助言もない
- トラブルが起きると、上の人がいなくなる
- 部下のミスを、上司がかばわない
- 口うるさい人や、上に気に入られる人ほど評価される
- 辞めた人の仕事が補充されず、残った人に回ってくる
- 辞めていく人の本当の理由が、上に届いていない
当てはまるものが多いなら、あなた一人の頑張りで職場を変えるのは難しいと私は思います。社内の人に相談しても、同じ結論になりがちです。会社の外にいる人に、話してみてください。
「まぬけなふり」をしてまで、残る必要はない
ピーターの法則とは
上司が問題を解けない理由を考えるとき、ヒントになるのが「ピーターの法則」です。教育学者のローレンス・J・ピーターらが書いた本『ピーターの法則』(日本語版はダイヤモンド社)で示された、「組織において人はおのおのその無能レベルまで昇進する」という法則です。
今の仕事で成果を出した人は、昇進します。昇進を重ねると、いつかその人の力では務まらない地位にたどり着き、そこにとどまります。だから組織の上のほうは、その地位に見合う力のない人で埋まりやすい、という考え方です。
この法則に当てはめると、ダメ出しばかりの上司は、本人の性格だけで生まれるわけではありません。今の仕事ぶりで人を次の地位に上げていく、組織の仕組みが生むものだとも言えます。
本にある「創造的無能」
この本では、自分に合わない地位まで昇進させられないための知恵として、わざと無能なふりをする「創造的無能」がすすめられています。私もこの本を読んで、「まぬけなふりをすればいい」というのは、確かに効果があるかもしれないと思いました。
できる人ほど仕事を押し付けられる職場なら、できないふりをすれば、負担は減るかもしれません。
でも、そもそもおかしなことを言っているのは、上司のほうです。それなのに、なぜ自分がまぬけなふりをして、自分を押し殺してまで会社にいなければいけないのか。そう考えたら、私にはできませんでした。
上司は変えられない。変えられるのは、自分の環境
今になって思うのは、上司や社長の能力が、その会社の上限だということです。部下がどれだけ頑張っても、上の人が変わらない限り、仕組みは変わりません。
上司の言うことに、すべて従う必要はありません。「上の人の言うことは聞くものだ」と思い込んでいるほど、相手が意識していてもいなくても、頑張りを吸い上げられてしまいます。
正面から話し合えば分かり合える、という意見もあります。ただ、話し合いで解決する相手は、ごく少数だと私は思います。話して解決する相手なら、とっくに解決しているはずだからです。
だから私は、上司を変えようとするのをやめて、自分の環境を変えることにしました。合わない場所からは、離れていい。逃げることは、前向きな選択だと私は考えています。
離れる前に、できること
いきなり辞める必要はありません。私の場合は、会社と関係のない昔からの友人に話したことで、当たり前だと思っていたことが当たり前ではないと気づきました。転職サイトに登録して、届くスカウトを見るうちに、今の職場の条件もはっきり見えてきました。
- 社内ではなく、会社の外の人に話してみる(社外の相談相手の選び方)
- 転職サイトに登録して、届くスカウトで今の職場を測る(ビズリーチを使った記録)
- サービス残業まで入れた、本当の時給を計算する(実質時給の計算)
- 辞めると決めたら、引き止めへの備えをしておく(管理職の辞め方)
まとめ
- 責任を取らない上司は、ダメ出しはしても答えは出さず、トラブルからは逃げ、仕事は丸投げにする
- ダメ出しばかりになるのは、原因を部下の気持ちに求めれば、上司が何も決めずに済むから
- 部下のミスは、上司の責任でもある。かばわない職場では部下が動かなくなり、頑張る人に負担が集まる
- 口うるさい人が評価される職場では、原因を考えられる人から辞めていく(死海効果)
- 「まぬけなふり」で身を守るより、上司を変えようとするより、自分の環境を変えるほうがいい
- まずは社外の人に話し、転職サイトに登録して、今の職場を測ってみる